毎週 木曜日発行!!  平成13年 11月1日創刊

週刊 上原直彦
「浮世真中」が本になりました!
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週刊上原直彦「浮世真ん中」が本になりました!
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2006年 10月5日
連載 エッセイ
      「浮世真ん中」(257)

*<風に吹かれて・高速道路>その(2)=宜野座IC編=

 沖縄自動車道・高速道路は、北の名護市許田ICから南の那覇市首里ICまで、延長57.3km。本島を縦断している。
 各ICの出入り口近くに掲示された所在地のイメージパネルを追って、車を進める。
 〔ハングライダー〕の許田ICに入って、すぐ目につくのは、両側の山や雑木林に立っている赤茶けた琉球松。初めての観光客は(松が紅葉しているッ)と、興味を示すが、さにあらず。松喰虫<まつくいむし>に命を絶たれた枯れ松なのだ。この被害は、30年ほど前から憂慮され、県も必死に対策を講じてはいるが、なかなか防止する事ができないでいる。
 枯れ松に、切ない気持ちの同情を寄せながら9.2km行くと〔京太郎・獅子舞〕のパネルを見ることになる。宜野座ICだ。

 宜野座村<ぎのざそん>は、昭和21年<1946>4月1日。金武村<きんそん。現・町>から分村して成立。面積31.28ku。村の花=ツツジ。村の木=リュウキュウマツ。村の鳥=めじろ<方言名ソーミナー>。村の魚=ミーバイ<和名メバル>。
 それよりも何よりも、2006年・春の高校野球選抜大会で全国を沸かせて優勝した宜野座高校があり、また、プロ野球阪神タイガーズ・春のキャンプ地として、一躍有名を馳せている。
 民俗芸能も多く保存、継承されていて、陰暦8月15日<今年は10月6日>に催される村遊び<むらあそび>の演目「長者ぬ大王=ちょうじゃぬ うふぬし」は有名。それに「京太郎」「獅子舞」などがある。ICのパネルに採用したのは、そのことによる。

 〔京太郎=ちょんだらー〕
 琉球王府時代。京都を終われてきた(太郎)と名乗る男親子が、首里の東・安仁屋村<あんにゃむら。現・汀良町界隈>に住み着き、念仏踊りや人形芝居、春駒踊り、鳥刺し舞などを演じて暮しを立てていた。つまり、門付芸人及びその芸を「京太郎」と称する。
 彼らの行動範囲は首里に止まらず、沖縄中部、北部に広がり、殊に法事のある家で演じた供養のための念仏踊りが、7月のお盆には欠かせない「エイサー」の原型である。
 慶長14年<1609>。薩摩藩は、琉球国侵攻を敢行している。その前夜、琉球王府では、抗戦か和睦かについて議論を重ねた。その際、和睦派の城間親方<ぐしくま うぇーかた。親方=現在の大臣に当たる役職>は、
 「薩摩はすでに、京太郎なる者を琉球に送り込み、各地を回遊させて地形、軍事力等をつぶさに調査している。京太郎は、門付芸人を装った薩摩藩の間諜<スパイ>だったに違いない。すでにわれらに勝ち目なし。和睦すべし」
 と、国土に言上したという。これは宜野座村に伝わる話。
 [獅子舞]
沖縄の獅子舞は、信仰とともに中国から伝来したと考えられているが、年代を特定できないほど、昔のことらしい。現在、宮古・八重山はもちろん沖縄全域に伝承されていて、毎年、豊年祭や十五夜遊びに演じられている。獅子を尊厳なるものとして崇め、その威力によって、あらゆる悪霊・災害・厄を払うとともに、五穀豊穣、子孫繁栄を託してきた。
 獅子頭は、たいていデイゴの木で造る。目を剥き、口を開閉させることができ、所作によって、喜怒哀楽を見事に表現する。胴体は、棕呂<しゅろ。棕櫚>、芭蕉、麻などの組織を褐色に染めて造る。1頭舞・2頭舞。それに演技内容も所によって異なるが、ドラや太鼓、笛<ファンソウ>、法螺<ブラ>などの鳴り物に合わせて、村の遊び庭<あしびなー。行事を催する広場>に登場。単独で威勢を示す舞を演じた後、毬と戯れたり、棒術の若者を相手に乱舞したり。その技は詳細かつ勇壮。

 足打ち=足を踏ん張り、あたりを睨み、悪霊を威嚇。
 大廻り=左右を睨み、緩急をつけて廻る。
 三角飛び=前後左右に飛び跳ねる。
 虱掻き=首や尻を掻き、虱<しらみ。方言=シラン>を払う。時には、大きな歯で噛んだりする。
 これは、獅子舞の基本的所作である。もちろん、地域によって演技が異なるのは言うまでもない。さらに最近は、地域で考案された大技小技が取り入れられて、観客の喝采を得ている。

 ところで。
 秋の味覚、柑橘類が出回っている。
 シークァーサーに次いで、カーブチーの登場。カーブチーは皮が厚く、熟しても緑が濃い。ほどよい酸味と甘さで美味。大きさは、温州ミカンの小玉程度。カーブチーとは、皮が厚いの意。しかし、実をつけたからといって、すぐに食するのは控えよう。
 カーブチーは、8月15夜、9月15夜<後ぬ十五夜=あとぅぬ じゅうぐやー>の月の光をいっぱい浴びて、甘味を増すと伝えられている。

 さて。京太郎・獅子舞に見送られて、車は南へ。8.2km先の金武ICへ向かう。どんなパネルが待っているのか。


 次号は2006年10月12日発刊です!

2006年10月分
週刊上原直彦(260)<風に吹かれて・高速道路>その(5)・沖縄北IC編
週刊上原直彦(259)<風に吹かれて・高速道路>その(4)屋嘉=石川IC編=
週刊上原直彦(258)<風に吹かれて・高速道路>その(3)=金武IC編=
週刊上原直彦(257)<風に吹かれて・高速道路>その(2)=宜野座IC編=

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