毎週 木曜日発行!!  平成13年 11月1日創刊

週刊 上原直彦
「浮世真中」が本になりました!
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週刊上原直彦「浮世真ん中」が本になりました!
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2006年 7月27日
連載 エッセイ
      「浮世真ん中」(247)

*<念仏踊り・エイサー>

♪仲順流りや七流り 黄金ぬ囃しや七囃し
  五ちぬ年に母離り 七ちなたくとぅ思び出じゃち
   国々さまざま巡るとぅん 我親に似ちょーる 人居らん

七夕・盆入りを間近にひかえて、エイサーの稽古にも熱が入る。県下各地、大小を問わない集落単位で独自のエイサーが仕組まれ、仕上げにムチが入っている。
15、6人。2、30人。あるいは50人。所によってはそれ以上の青年男女が、流れる汗を拭うのも忘れて歌三絃、大小の島太鼓、パーランクーに合わせて手踊りをする。
まず、最初に歌い出されるのが「仲順流り」。もっとも、最近は必ずしもそれとは限らず、曲順も異なってきたが、40年ほど前までは、(1)仲順流<ちゅんじゅん ながり>。(2)久高まんじゅう主<くだか>。(3)前ん田節<めんたーぶし>。(4)作たる米<ちゅくたるめー。別名スンサーミー>。(5)さうえん節<別名ピーラルラー>。
6)いちゅび小節。(7)トゥータンガーニー。(8)すーりー東<あがり>。(9)テンヨー節。そして(10)唐船どーい<とうせん>で締めくくっていた。
しかし、日本復帰<1972年5月15日>この方、沖縄の新しい島うたが全国的に注目されるようになり、それらをエイサーバージョンで歌い演じている。もちろん「仲順流り」は外されない。
♪歌意=仲順一帯の山並みは七重の流線。(私は)5才にして母と死別。7才になったとき、ことの外、母恋しく、沖縄中を探し回ったが、わが親に似ている人は、ひとりもいない。(父の恩山より高く、母の恩海より深くと、つづく)
沖縄本島東海岸の高台に位置する北中城村仲順<きたなかぐすくそん ちゅんじゅん>に伝わる仲順大主<うふしゅ>と3人の息子にまつわる親孝行伝説が、祖霊供養行事「お盆」と重ね合わされて「仲順流り」は、エイサー歌の代表となった。
この節は「無蔵念仏節=んぞう にんぶち ぶし」という節名になって、八重山地方でも歌われている。
「無蔵念仏節」は1770年ごろ、八重山登野城村<とのしろ>出身宮良善勝が、上原目差<うぃーばる みざし。上原は西表にある村落名。目差は役職名>を勤めていた際、公用で首里王庁に出仕。滞在中、首里郊外のアンニャ村<現・汀良町>にすむ京太郎<ちょんだらー>が演ずる念仏踊りを習得。帰郷後、八重山風に改作したといわれる。以来、お盆のアンガマ踊りはこの歌で始まり、「孝の道」を説いていて、実に14節。時間的にも10分前後を要する。殊に与那国島のそれは、歌い出しが♪南無阿弥陀仏 阿弥陀仏・・・・の唱えから始まる。そして、この節はお盆以外には歌わない。

エイサーは本来、お盆の祖霊供養の歌舞。かつては、陰暦7月13日・御迎え<うんけー>、14日・中ぬ日<なかぬ ふぃー>と供養行事を成し、15日・御送い<うーくい=精霊送り>をすませた後、集落の守護神を祀ったアサギー前広場に集まり、円陣を組んで歌舞を奉納。さらに各家々を廻って無病息災、五穀豊穣、一族繁栄を祈願した。
本当北部大宜味村<おおぎみ>や国頭村<くにがみ>には女だけのエイサーがあった。これは、諸々の祭祀行事に女のみによって演じられる「臼太鼓=うし でーく。うす でーく」の延長線上でなされたと思われる。また、嘉手納町千原<かでな ちょう せんばる>のエイサーは、逆に男だけである。しかし、千原集落は戦後すぐ「嘉手納米軍基地」として接収されているが、集落はなくても方々に移り住んでいる千原出身者によって保存されている特異のエイサー。さらに、久しく途絶えていたうるま市石川の男だけのエイサーが今年、復活するという。

いま、エイサーには2つの流れがある。
ひとつは、故事にならい集落単位でなされるエイサー。もうひとつは、イベント用に仕組まれたそれである。
前者は「お盆」にしかなされないが、後者は年中演じられている。つまり、後者は本来の祖霊供養の理念から離れて、沖縄観光アピールに役立っている。季節を問わず県内はもちろん、国内、世界各地で公演されて好評のようだ。したがって、エイサー歌もロックアレンジ、ニューリズムが取り入れられた。イベント以外、結婚披露宴の余興にも登場。出演料はそのエイサー組の維持費になっているそうな。
エイサーが、停滞気味の青年会活動を活発化させたのも事実だが、諸々の行事、伝統芸能の故事来歴・本旨を忘却すると、いつかは正体不明のモノになることも心得ていなくてはなるまい。幸いにして沖縄の若者たちは、エイサーのルーツをよく知っている。

沖縄の夏の夜。各地のエイサーの稽古は大詰め。その歌三絃、鳴り物の音が、家の近くで鳴っても「騒音被害だッ」「安眠妨害だッ」などと、ヤボを言う人はひとりもいない。


 次号は2006年8月3日発刊です!

2006年7月分
週刊上原直彦(247)<念仏踊り・エイサー>
週刊上原直彦(246)<エイサーのころ>
週刊上原直彦(245)<頼むぜッ・シーサー>
週刊上原直彦(244)<木登り賞・復帰記念メダル>

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