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| 2006年 5月25日 連載 エッセイ 「浮世真ん中」(238) *<海の祭ハーリー・ハーレー> 「ハーリー鐘<ドラ>ぬ鳴いねぇ 雨ん上がゐん」 本格的夏の到来を告げる海神祭は旧暦5月4日。通称「ユッカぬ日」で今年は新暦5月30日にあたる。漁業を営む各地では海神を讃え、海の安全と豊漁を祈願する祭事が古式豊かに行われる。そして、その日のメインイベントが「ハーリー。爬竜の中国音。舳に竜頭、艫を竜尾の彫り物で飾った競漕船」だ。例年ならば、ハーリー競漕に打ち鳴らすドラ鐘の響きと共に、沖縄の「雨ぬ節。あみぬしち=梅雨」は上がるとされているが、今年は閏年で旧暦7月が2度あるせいか様子が違う。 草木が一応の大きさに達することが意味をする季節用語「小満。すうまん」が今年は5月21日。芒<のぎ>のある穀物の種を蒔くころとされる「芒種。ぼうすう」は6月6日が入り。「小満・芒種」と合わせ読みをし、長い梅雨のシーズンとされているのだが、芒種よりも7日早く海神祭のハーリー鐘を聞くことになるのだ。 ハーリーは、御願バーリー<うぐぁん>に始まり、行事終了を告げる上いバーリー<あがい>の中間で、海人<うみんちゅ。漁民>の技を披露する転覆競技のほか、地域対抗競漕などが観衆の血を躍らせる。所によって多少異なるが12、3名の漕ぎ手、舵取り、鐘打ちが呼吸を合わせて港内の波の上を飛ぶように走るさまは、勇ましくも美しい。 ![]() 600年の伝統を持つハーリー競漕の種目も、時代に合わせて変わる。港内に放ったアヒルや西瓜取り競争。最近は女性のみの競漕、職場対抗、自衛隊チームの参加もある。 沖縄本島南部に位置する八重瀬町具志頭港川では、一般的に言う「ハーリー」を「ハーレー」と発音する。これは糸満市はじめ、南部地域共通の訛りによるものだ。港川は、かつて糸満漁師が拓いた集落で糸満発音がそのまま残ったものと考えられる。 港川ハーレーの見どころは、選抜お母さんチームと選抜小学生チームの対戦だ。それぞれ11名。小学生チームは4、5、6年生。 「対戦回数は数えたこともないが、お母さんチームの全勝。母と子でも手を抜くわけにはいきませんからねッ。手抜きは教育上よくありません」 猛練習中のひとりのお母さんは、日焼けの赤ら顔から真っ白な歯をのぞかせて、そう言い切っていた。 また、港川ではハーレー開催を7日後にした5月24日<旧暦4月27日>から前日まで早朝5時、小学生4年生〜6年生12、3名が集団となり、ドラを打ち鳴らしながら集落内を廻る。例え雨でも風でも休止はしない。これも伝統的に行われていて、人々がいかにハーレーを待ち焦がれているかがうかがえるし、子どもたちもそのメンバーに選ばれることを誇りにしている。さらに港川では、決められた日以外にはドラは鳴らさない。 「あの世の人がでてくるとされている。まあ、死者と言っても村内の人だからでてきてもいいが、まずは生ち身<いちみ。現世の人>の我々だけで祭事をする。その代わり、ハーレーの翌日は、殊に海で亡くなった先人たちの「ハーレーの日」と位置づけて、舟の飾りや道具はそのままにして置く。かつて彼らがやっていたハーレー競漕だから、身はこの世になくても血が騒ぐのだろうよ」 これは港川出身の知人の談話。先祖神を敬う海人魂が感じられる。心やさしい。
ハーリーの日。つまり、旧暦5月4日「ユッカぬ日」は沖縄風の「子どもの日」でもある。首里那覇の街方では馳走を作り仏壇に供えて、子どもたちの健やかなる成長を祈願する。また、目抜き通りにはヰーリムン市<もらいもの。転じて玩具の意>が立った。 主なヰーリムンは、ハーリーグァ<爬竜船の模型>、ハーチブラー<お面>、ウッチリクブサー<起き上がり小法師。だるま>、フトゥキグァ<仏小。人形>、コンコン馬小<木製の飾り馬>、ハブグァ<くねくね動くように細工された竹製のハブ>など。サンシングァ<30センチほどのミニさんしん>もあった。 琉球宮廷音楽、近世の名人とうたわれる金武良仁翁<1873・5・4〜1936・9・1>は幼少のころ「ユッカぬ日」に買ってもらったサンシングァが始まりで名人の域に達した。 5月30日。 海の祭がなされて、沖縄は長い夏に入る。 ![]() |
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| 2006年5月分 |
| 週刊上原直彦(238)<海の祭ハーリー・ハーレー> |
| 週刊上原直彦(237)<あやぁ・あんまぁ・かあちゃん・ママ> |
| 週刊上原直彦(236)<糸満美人多し> |
| 週刊上原直彦(235)<鯉物語> |