毎週 木曜日発行!!  平成13年 11月1日創刊

週刊 上原直彦
「浮世真中」が本になりました!
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週刊上原直彦「浮世真ん中」が本になりました!
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2006年 3月30日
連載 エッセイ
      「浮世真ん中」(230)

*<礼・挨拶>

 野球のルールは分からなくても、日本中が野球ばなしに花を咲かせている。
 第1回WBCで「王ジャパン」が世界1になったからである。
 「野球は10人でやるもの」と言えば、何の疑いもはさまず納得する我が側近の者までが、王さん、イチロー、松坂と、まるで親戚付き合いの野球通になっている。
 日本プロ野球12球団中、8球団が沖縄で春期キャンプを張る。阪神タイガースのキャンプ地宜野座村には、三絃サウンドで歌う「阪神どーいッ」なる歌が生まれ、応援歌として歌われている。また、今年は第78回選抜高校野球大会に初出場した日本最南端の高校八重山商工が、富山県代表高岡高校に勝ったとあって、野球熱はいよいよ高くなるばかりである。
 日本プロ野球も開幕した。川上哲治が現役時代からこの方長嶋茂雄までの巨人ファンである私は、試合開始直後、後攻チームの選手が一斉にグランド入りするシーンが好きだ。ベテラン、中堅、新人を問わず、脱帽・一礼して守備位置に走りつく。メジャーリーグでは見られない光景だ。日本プロ野球の場合「グランドには銭が落ちている。実力で拾え」と叱咤激励、教育するそうな。あの一礼は、銭勘定という生臭いそれの前に、選手にとってグランドは聖地、聖域とする観念があってのことではなかろうか。それは、大相撲でも言われているようだ。
 いま、国の行く末よりも「わが党の都合」ばかりを、なりふりかまわず論じている国会のセンセイ方も、議場入りの際は一礼する。もっとも、しないセンセイもいらっしゃる。

 「礼に始まり、礼に終わる」
 大方の習い事で言われている言葉である。
 琉球舞踊の場合、踊り手は着付けがすんで下手<しもて>のソデにつくと、呼吸をはかって上手<かみて>の地謡連に一礼。さらに、これから立つ舞台の板の間に深々と一礼する。地謡連もまた、踊り手の一礼の行為を確認してから、始めの1音を奏するのである。踊り手は、地謡連に礼をつくし(板の間にいらっしゃる)とされる芸能の守護神に(無事に踊りおうせますように)の祈りを捧げて、舞台に歩をすすめるのだ。それを受けて地謡連は、踊り手の所作だけでなく「芸」そのものを支えるために呼吸を合わせる。両者の気合がひとつになる時が流れ、その緊張感・一体感は踊り手が下手に入るまで持続される。
 観客は観客で、踊りと音曲の一糸だに乱れない舞台を堪能して感動。拍手という「礼」をつくすのである。舞台裏は、それだけでは終わらない。踊り手は拍手の鳴りやむのを待って、再び舞台に向かって呼吸を整えて正座、頭を下げる。
 「地謡の方々、板の間の守護神。無事、精いっぱいの表現ができました。果報志でーびる<かふうし。ありがとうございましたの意>」
 感謝の一礼。観客席からは見えない舞台裏の厳かな「礼の儀式」が、情念を持って成されているのである。
 「プロの世界のこと」と言わず、この「礼」を「挨拶」として、あらゆる場面で、言葉にして発したいものだ。会社や役所ならば、出退時の挨拶を最低限として、家庭では朝夕の挨拶、食卓、来客時のそれを窮屈に考えるのではなく、それぞれのスタイルの「わが社・わが家の挨拶」があれば、このハーダーリー<無秩序。タガのはずれた。手放し状態>の世の中も、多少なりとメリハリがつくのではなかろうか。
 自称タイガー・ウッズのアマチュアゴルファーもロングパットがドンピシャ決まると、日ごろは折って捨てたくなるパターに、思わずキスをするのではないか。その行為もゴルフの神への感謝の礼。
 「礼・挨拶」と言うと、いささか格式的になりがちだが、日常生活の中では、その上下<かみしも>・袴は脱いでよし。遊び心を発揮した礼・挨拶を楽しみたい。




 WBCの世界1をかけて対戦したキューバの新聞は報じている。
 「日本の選手は皆、礼儀正しい。グランドにツバを吐く選手はひとりもいなかった」
 アメリカ人やキューバ人は、噛み煙草やガムを好むあまり、かかる行為が多々、目に付くのだろうか。日本でも、ときたま見かけることではあるが・・・・。
 さて。
 「守禮の邦」を標榜するわが琉球の礼は、どうなっているのか。意識調査の必要があるか。その前に、私自身の「礼」意識はどうか・・・・な。

 


 次号は2006年4月6日発刊です!

2006年3月分
週刊上原直彦(230)<礼・挨拶>
週刊上原直彦(229)<医者半分・ユタ半分>
週刊上原直彦(228)<ハル婆だけのツツジ>
週刊上原直彦(227)<名曲・かじゃでぃ風の周辺>
週刊上原直彦(226)<一体感の日・さんしんの日>

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