毎週 木曜日発行!!  平成13年 11月1日創刊

週刊 上原直彦
「浮世真中」が本になりました!
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週刊上原直彦「浮世真ん中」が本になりました!
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2006年 1月26日
連載 エッセイ
      「浮世真ん中」(221)

<春は、さんしんの日と共に>

 「ひと足・お咲きに」
 春を告げる日本一早い桜まつり・第28回「本部八重岳桜まつり」のキャッチフレーズである。オープンは1月21日、22日だったが、標高453メートルの八重岳中腹に位置する「本部八重岳桜の森公園」の山頂までつづく沿道には、濃いピンクのヒカンザクラが咲いている。43年前、1000本を植えて以来、年々本数を増し、八重岳一帯に自生する桜をふくめ、いまでは7000本余りが一斉に開花。2月いっぱいは、花見が楽しめるようになった。
 また、本部町の国営沖縄記念公園では、2月4日から12日まで「沖縄国際洋蘭博覧会」が催される。
 1月中旬の2、3日。気温が25度まで上がったせいで、宮古島では(わが世の春・到来)と早合点したクロサキクサゼミが土の中から這い出してきて、刈り入れ真っ最中のサトウキビの葉や木立で鳴き、本来は桜のつぎに咲く沖縄の梅もいい顔を見せている。
 しかし、梅・桜・蘭が咲き、地中の虫たちが動きはじめても、沖縄正月<うちなぁ そうぐぁち。旧暦正月>は1月29日。このまま春へまっしぐらというわけにはいかない。2月中旬から下旬にかけて「別れ寒さ。わかりびーさ」と称するこの冬一番の冷たい北風が吹き抜け去って後、風は南にまわり、沖縄の春は腰を落ちつけるのである。したがって、ここしばらくは、春は名のみ・・・・。

 「沖縄の春は、さんしんの日が連れてくる」
 10年程前から巷では、そんな季節用語が使われるようになった。
 RBC<琉球放送>iラジオ主催行事「ゆかる日・まさる日・さんしんの日」は、毎年3月4日に催され、今年14回目を数える。
 午前11時50分から午後9時までの生放送。まずは正午の時報音を合図に沖縄中のさんしん<三線。三絃とも表記する>が鳴り、祝賀歌「かじゃでぃ風節」を大合唱する。会場で、職場で、家庭で。
 都合8回の時報音に合わせるということは、3月4日は1日中さんしんの音が南の島を春いろに染めるのだ。県下はもちろん北海道、東北、関東、関西、九州のさんしん愛好者の演奏、イギリス、アメリカ、南米の県人も相呼応、その模様は生中継される。

 主会場は読谷村文化センター鳳ホール。
 野村流音楽協会。野村流古典音楽保存会。読谷村文化協会。琉球民謡協会。八重山古典民謡保存会。宮古民謡研修会。読谷村立村立喜名小学校三線クラブ。琉球古典音楽保存会。野村流伝統音楽協会。琉球古典音楽安冨祖流絃馨会が時間入替えで「かじゃでぃ風」の演奏をリードする。舞踊は島袋流千尋会。宗家真境名本流真薫会。読谷村文化協会。玉城流翔節会。宮城流美代乃会。宮城流朱之会。
 島うたの歌者も総出演するのは言うまでもない。

♪歌とぅ三絃ぬ昔始まいや 犬子音揚りぬ神ぬ御作
<うたとぅ さんしんぬ んかし はじまいや いんく にあがりぬ かみぬみさく>
歌意=歌・三絃。琉球音楽の創造は、音揚り神<音東り神とも書く>と尊称される赤犬子<人名。あかいんこ。あかいんく。あかんくー>に始まる。

 赤犬子の生没は未詳だが、おもろ歌唱者、即興歌人。琉球民謡の始祖として神格化「音揚り神」として信仰されている。
 赤犬子は三絃楽器を手に、うるま市津堅島をはじめ、国中を放浪。読谷村楚辺で生涯を閉じたとされる。楚辺には「琉球音楽の祖・赤犬子碑」がある。読谷村立文化センター鳳ホールを主会場にする理由もここにある。
 「さんしんの日」の正午。碑の前には読谷村の有志が集まり「かじゃでぃ風」はじめ、古典音楽、舞踊が奉納される。

 出演者のひとり、イギリス人のマット・ギランは博士号を持つ東洋民族音楽研究者。昨年、沖縄女性と結婚して(永住)を希望している。彼から電話が入った。
 「ボク、出演できないかも知れません。実は、妻の出産予定日が3月4日なのです。妻に付き添っていたいのです」

 「ゆかる日・まさる日・さんしんの日」まで30日余り。その日に向けて各地の準備も熱気をましてきた。
 沖縄の春は花や鳥や風、それにマット・ギラン夫妻の新しい生命を伴って、さんしんの音色が連れてくる。


 次号は2006年2月2日発刊です!

2006年1月分
週刊上原直彦(221)<春はさんしんの日と共に>
週刊上原直彦(220)<CMのある風景>
週刊上原直彦(219)<歴史を刻む・八重瀬町誕生>
週刊上原直彦(218)<戌年・犬の話>

過去ログ