毎週 木曜日発行!!  平成13年 11月1日創刊
週刊 上原直彦 「浮世真中」が本になりました!
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週刊上原直彦「浮世真ん中」が本になりました!
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2005年 1月27日
連載 エッセイ
      「浮世真ん中」(169)

<酉年・しでぃ果報=しでぃがふう>

 2005年の旧正月は、2月9日水曜日にあたる。
 この日を「沖縄正月=うちなぁ そうぐぁち」と称する。世界中どこにも1月1日は訪れるが「うちなぁ」をかぶせて「正月」とし、独自性を強調しているのは、沖縄ぐらいではなかろうか。もっとも、ベトナムや中国などアジア圏には、旧正月を祝う国が少なくないから、ひとり「沖縄正月」を我が物顔で自慢しても仕方がない。
 日本では、持統天皇4年<西暦690年>に、初めて暦法が採用されたそうな。以来、明治に入るまで、9種類の暦が使われ、天保暦が最後。そして、天保暦は、明治5年師走3日をもって改暦され、西暦の明治6年<1873年>1月1日としたと記録にある。したがって、日本における西暦は、132年を刻んだに過ぎない。
 現在、沖縄では新旧暦が併用されている。
 南北に約3000キロの日本列島にあって、雪はもちろん、みぞれも降らない亜熱帯であってみれば、海業<うみ わじゃ・漁業など>、陸業<あぎ わじゃ・農業など>、つまり、潮の干満も季節の風も、陰暦で観測したほうが自然界と一体になれるのだ。

 来る2月9日。沖縄正月を迎えてはじめて、沖縄は真の酉年になる。
 正月を祝った後、すぐにやってくるのが、生まれ年を祝う「トゥシビー祝儀=すうじ」である。一般的に「生年祝い=せいねん いわい」と言う。
 「トゥシビー」の語源は「年忌み」とされている。生まれ年は、運が転換する年にあたり「厄」とされる。そのため、生まれ年の人は、あらゆる行為をひかえめに、慎まなければならない。しかし、それではいかにも窮屈でならない。そこで祝事「トゥシビー祝儀」をすることによって福を招き、その人についた「厄」を落とすという観念である。この考え方は、例えば、子供が生まれた場合、親たちは、近所の元気な童たちを集めて馳走をふるまい「ハハハハッ!」と笑い声を上げさせる。これも、笑うという祝儀によって、新生児に「童神=わらびがみ」の徳をつけるというもの。「トゥシビー祝儀」と、一脈通ずるものがある。
 残念ながら、こうした新生児祝いの習慣は、まったく絶えてしまったが、高齢者の「トゥシビー祝儀」は、いまなお婚礼の宴以上、盛大かつ厳かに執り行われている。
 年忌みを祝事で乗り越えると、翌年は「厄年を無事に過ごした」として、またしても小宴をはる。これを「晴厄=はりやく」と言い、近い親戚だけでなされるのが普通。
 一方に「しでぃーん」という言葉があって、生まれる。生まれ変わる。孵化するなどを意味している。鶏の卵がヒナにかえるのも「しでぃーん」で、新生児が最初に遣う産湯は「しでぃ水=みじ」である。また、年輩者は久しぶりに逢う友人知人に対して、見ない内に「しでぃ変わとぉしぇ」を挨拶言葉にする。
 「生まれ変わったみたいに、若くなったネ」
と、声を掛ける。病が癒えた人にも、そう言って「生まれ変わったから、この後は何事もなく長命しますヨ」と、快気と共に長寿の予祝をするのである。
 こうした命と向き合った観念が、長寿県沖縄の根底にはあるように思える。

 琉歌一首。
 “鶏ぬ卵や20日目にしでぃる 我身や里逢ちゃてぃ今どぅしでぃる”
 <にわとぅいぬ くがや はちかみに しでぃる わみや さとぅいちゃてぃ 
なまどぅ しでぃる>
女童は言う。
「鶏の卵は、親鶏に20日間抱き温められてヒナになる。アタシは、あの人の愛に抱き包まれて、いま、大人の女に生まれ変わった」
あなたも、酉年のはじめに「卵」になり、すてきな恋に出会って「しでぃ」変わってみてはいかが。
 前期高齢者の私にとっても酉年は、いい「しでぃ果報=かふう」が待っている予感がしてならない。


 次号は2005年2月3日発刊です!


2005年1月分
週刊上原直彦(169)<酉年・しでぃ果報=しでぃがふう>
週刊上原直彦(168)<ムーチーのころ>
週刊上原直彦(167)<貯金の本>
週刊上原直彦(166)<酉・鶏・鶏>

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