毎週 木曜日発行!!  平成13年 11月1日創刊
 週刊 上原直彦 ニュース
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2004年 7月29日
連載 エッセイ
      「浮世真ん中」(144)

*<2004年・真夏>

 「くたんでぃん さあみ しぇーびらに」
 「いい。クァんンマガぬちゃあん アシブん ふかに」
 RBCiラジオ日曜日朝6時放送「ふるさとの古典」の解説者で、沖縄芸能史及び風俗史研究家崎間麗進大兄<うふーっちー>に逢うと、こんな夏の挨拶ことばを交わし、番組打合せに入る。
 上原「お疲れも、何の差し障りもございませんか」
 崎間「はいはい。(お前さんも)子や孫たちも汗疹もかかずにいるかい」
 くたんでぃん=疲労。アシブ=汗疹・あせも。
 本人のみならず、家族の健康にまで気を配って下さるのがありがたい。

 幼い子や孫のためには冷房暖房を入れるが、殊に冷房が嫌いで、この夏場をクバオージひとつで過ごしている友人がいる。
 クバオージは、檳榔樹<びんろうじゅ>の葉で作る。ヤシ科の常緑高木で20メートル程にもなり、幹は直立。マレーシア原産。蒲葵<くば>とも言い、その葉を団扇形に細工したのが、クバオージ<蒲葵扇>である。王府時代の士族は、唐<中国>や大和<日本>から入ってきた絹や紙張りの扇を使っていたが、一般平民はクバオージで夏の暑さをしのいできた。かつては「沖縄・夜に戸を閉めず。道に落ちし物を拾わず」の生活にあっては、それで十分だったのだ。
 しかし、昨今は「夜に戸を閉めず」では、命に関わる。おかげで、冷房嫌いの友人は、夏の間、戸も開けず、汗をかいて就寝する。(健康のためには、この方がよい)を身上としてはいるものの、友人の肘の内側や首筋のあたりに汗疹を見ることができる。汗疹は吹出もののせいか、沖縄口では「アシブ ふちゅん」と言う。
 「アシブ ふちゅか あちさんやッ=汗疹が吹き出るほど暑いねッ」
 夏の挨拶ことばとして、いつまでも掛け合っている。


クバオージで涼をとる 諸見里眞重さん(94才) 諸見里ウトさん(93才)

クバオージ

 真夏日なる気象用語。昼間の最高気温が30度以上を記録した日のことであることは、周知の通り。沖縄は6月下旬から真夏日つづきで、30度−33度で落ち着いている。夏特有のフェーン現象が起きるほどの山がなく、海からやってくる風は島の上を渡り反対側の海に吹き抜けていくからだ。しかし、今年は山梨、山形、秋田、京都で40度以上の猛暑と聞いて、南の島のウチナーンチュがびっくりしている。
 「暑中見舞い申し上げます」

 7月17日から8月15日までは陰暦の6月。この期間を「真六月=まるくぐぁち」と言い、一年の内で一番暑いとしている。さらに「七夕太陽=たなばた てぃーだ」「七月太陽=しちぐぁち てぃーだ」なることばもあって、これまた「一番暑いッ」とされている。つまりは、陰暦6月7月は、最も暑い日々がつづくから、気を抜いてはいけないと、先人は教えているのだ。沖縄の夏の暑さには2番がないのである。それでいて、七月<しちぐぁち。旧盆の別称>に演じるエイサーの歌三絃や太鼓の音が遠のくころ吹きはじめる夜の涼風によって、ほんの心持ちやわらぐ暑さに「別り暑さ=わかり あちさ」と名付け、これほど願い下げたい暑さにも、惜別の情を示す。ウチナーンチュは、夏の暑さを楽しんでいるのかも知れない。

 真夏日に並行して「熱帯夜」がつづく。夜の最低気温が25度以上の日をいう気象用語。日本で熱帯夜が最も長くつづいたのは、昭和53年<1978年>。6月7日から9月29日までの115日間。沖縄県石垣島で記録している。今年は何処で、何日づつくことだろう・・・・。
 夏の古諺。
 「夏ぇ 目鼻口 ゆう見ーち 子ぁ育てぃり=なちぇー み、はな、くち ゆう んーち くぁ すだてぃり」
 夏の子。殊に赤子は目や鼻、口をよく見て育てよと教訓している。熱で目が赤くなってはいないか。風邪の前兆の鼻水は出ていないか。脱水症状はないか。それだけでも健康状態を知ることができる。母親でなくても、誰にもできる育児の基本ではなかろうか。

 うだる暑さに耐えられないときは、外に向かってリズムよく3度、5度口笛を吹いてみるとよい。それを数度くり返すと、不思議にどこからか涼風が吹いてくる。沖縄では、昔からなされている消夏法のひとつである。お試しあれ。
 


 次号は2004年8月5日発刊です!

2004年7月分
週刊上原直彦(144)<2004年・真夏>
週刊上原直彦(143)<男だけのFREE=ふり=遊び>
週刊上原直彦(142)<遠い日・夏の日>
週刊上原直彦(141)<いずこに!霊>
週刊上原直彦(140)<腰ゆっくぃー・腰憩い>

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