毎週 木曜日発行!!  平成13年 11月1日創刊
週刊
 上原直彦
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2004年 4月29日
連載 エッセイ
      「浮世真ん中」(131)

*<おきなわの子たち>

古都首里の城下。竜潭の水上にも鯉のぼりが泳ぐ季節になった。この光景は、首里のみならず、玉城村・ぐすくロード公園や嘉手納町比謝川に541匹、国頭村奥800匹。そして、宮古、八重山。つまり、沖縄中に見ることができる。

子どもは皆、間違ったことに敏感で、正義感をもって生きている。
ある日曜日の昼下がり。団地内を物干し売りピックアップ車が行く。運転席の屋根のスピーカーからは、使い込んだせいだろう、ちょっとノビたカセットテープの呼ばわりの声がのんびりと聞こえる。
「物干し竿〜。カーボン製の高級物干し竿。1本1500円!2本お買い上げで2500円。梅雨入り前に物干し竿はいかがですか。1本1500円!2本で2500円」
それを聞きつけて、徐行するピックアップを追ってきた小学生とわかる少年は、ハンドルを握っている物干し竿屋に言った。
「おじさんッ。計算が間違っているよッ。1本1500円なら2本では3000円だよ!2500円ではないよッ」
日本は不況下にある。これ以上、物干し竿屋さんに損はさせてはいけないと思ったのであろうこの少年は。将来、内閣府<金融・経済・財政政策>特命大臣竹中平蔵以上の経済通になるにちがいない。

沖縄市がまだコザ市だったころ。市内の小学校4年1組の教室は<さんすう>の時間だった。
先生=お店に、1個100円のリンゴが並んでいます。1000円では何個かえるでしょうか。
一斉に手があがり「10個かえますッ」の声。しかし、ひとりA少年だけは「11個ですッ」
先生=Aクン。10個でしょう。11個なら1100円払わなければなりませんよ」
かんで教える先生に対して、A少年は11個を主張して一歩も退かない。この主張に、強い教育的興味を覚えた先生は放課後、帰り支度のAクンに<11個>を導き出した数学的理論を問うてみた。少年は答えた。
「ほかの店では10個かも知れないが、ボクんちの近くのマチヤグァー<個人経営の店。雑貨店>では、10個も買うとおばさんはかならず、シーブンに1個くれるよ。だから1000円分だったら、11個さァ」

シーブン<添分>。おまけのことである。いまの大手スーパーやコンビニでは、表示された定価通りで、何をかってもシーブンは一切ないが、私の少年時代は、店はすべて「マチヤグァー」で、どのマチヤグァーでもシーブンがあった。いまのように、タバコ1ボール<今風には1カートン>買えば、その銘柄のPRライターが付くというのではなく、買ったその物の量を増やしてくれるのである。顧客に対するサービスもあるが、殊に子どもに対しては「お買い物のお手伝いごくろうさん。おりこうさん」のねぎらいが、シーブンには込められていた。マチヤグァーのおばさんもおじさんもやさしかった。

2004年3月25日第一刷。新日本出版社発行。発行者小桜勲。子どもの声を聞く児童文学者の会編「おとなはなぜ戦争するの」を、沖縄編を執筆した池宮城けいさんからいただいた。定価1600円。売り上げの一部はイラクの子どもたちのために役立てることになっている。
「イラク戦争にさいし、世界中でわきおこった戦争反対の声。日本各地でも子どもたちが戦争反対を訴えた。イラクの子らに思いをはせ、世界平和を願う日本の子どもたちの声と行動」を紹介した一冊。本をひらくと<もくじ>の次に沖縄の子のメッセージが載っている。

イラクの子どもたちへ。
元気ですか。イラクはまだ寒いですか。沖縄はもうあたたかくなってきたよ。戦争のコトは、もう知っていると思うけど、わたしは絶対反対です!アメリカの勝手な行動で、罪のない人たちが何百人も何千人も命をなくすなんて、ゆるせない。かならず戦争はなくなるから、アメリカなんかに負けずに1日1日を大切に生きてね。きっと幸せになれます。イラクと沖縄は、とても遠いけど、はなれていても、ずっとおうえんしています。いまのわたしには、いのることしかできないけど、がんばって生きてください。
沖縄・東江 望より。

鯉のぼりの季節。
物干し竿の子。シーブンの子。メッセージの子。皆、健やかな沖縄の子である。


 次号は2004年5月6日発刊です!

2004年4月分
週刊上原直彦(131)<おきなわの子たち>
週刊上原直彦(130)<清明・浜下り・一気に夏へ>
週刊上原直彦(129)<なんくる ないさ>
週刊上原直彦(128)<雨給り−たぼうり。雨乞いの歌>
週刊上原直彦(127)<四月の赤子>

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