毎週 木曜日発行!!  平成13年 11月1日創刊
週刊
 上原直彦
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2003年 3月27日
連載 エッセイ
      「浮世真ん中」(74)

*<看板・貼り紙・メニュー・電光広告>

看板、貼り紙、食堂のメニューの中には、微笑を誘い、ついつい嬉しくなる文字たちが踊っていたりする。
看板に「パンク屋」とある。<修理>の二文字を省いたのだろうが、意味は分かっていても「タイヤをパンクさせるのか。パンクしたタイヤを修理するのか」クスッと笑ってしまう。
コザ高校東道向かいに、鶏肉専門店「コッコロー・ハウス」がある。鳴き声の擬似音だ。これなぞ、一目瞭然「立派な店名だなぁ」と、見るたびに感心している。しかし、鶏の鳴き声も標準語では一般的に「コケコッコー」であり、英語では「クッカドゥドゥドゥルドゥ」である。また、沖縄でも、その表現は様々。首里=コッコローコー。那覇=コッコローウー。コッココーウー。中頭=ケッケレーケー。宮古平良=クッカクークー。クッカグーグー。宮古城辺=グッググーグー。
もしも、鶏肉店が宮古城辺にあったら「グッググーグー・ハウス」になったにちがいない。鶏肉商関係者には、その地域が生み出した擬似音で店名表示をするようお勧めしたい。
春夏秋冬を通して、沖縄食堂メニューには「冷し物一切」とあるが、具体的な品名がない。また、「おかず」「みそ汁」は、ごく普通。旅行者のために案内しよう。
「おかず」とは、豆腐、野菜、ポークソーセージ<ウインナーソーセイジの場合もある>を炒め、半熟卵をのせたもの。そして、みそ汁、ご飯、漬物<ちきむん。たくあん>が付いている。
「みそ汁」は、大きめの丼にたっぷりの具。豆腐、豚肉、野菜、半熟卵。そして、ご飯、漬物付き。
したがって、単品と思い込んで「おかずとみそ汁」を注文すると、大小二つのみそ汁とおかず、丼飯二杯、漬物二皿が出てくる。客が驚く前に食堂のオバさんが「なんと変な食事の取り方をする客なの?」と、首をかしげることだろう。「××食堂」の××がなく、ただ「食堂」とした看板の店も多い。その場合、「食堂」のメイン品目は「おかず」「みそ汁」である。
沖縄北部山原<やんばる>のある食堂メニューに「ポッタ汁」とあって、中身を確かめてみると「ポタージュ」だった。なるほど「汁」は「ジュウ」とも読む。間違いではあるまい。逆に「山羊スープ」には閉口する。「山羊汁=フィージャー汁」も、スマートになったものだ。
京都市内の骨董屋のガラス戸に「道を聞くだけの人は入らないでください」の貼り紙を見た。さすが観光地京都。目的地を聞く観光客が多く、商売にもさしつかえるほどなのだ。自衛手段の苦肉の策。
貼り紙の傑作は、化粧品店にあった。
「新製品発売中」の横に、鮮やかな色文字で「お股のお手入れサービス付き」とある。発見者はRBCラジオ・パーソナリティー小波津貞子女史。好奇心にかられて彼女、「お股のお手入れさーびす」を受けるため入店。新商品を買った強みでおせっかいにも「お股=また」ではなく「お肌=はだ」ではありませんかと問うてみた。店主の返事がマタいい。
「あらッ!ほんとッ。まあイヤだッ。よくあるミスよねッ。オッホッホ」

「ゆりかごから墓場まで」の総合商社の電光広告には、ちょっと白けた。
宴会―旅行プラン―全国温泉案内=旨いもの紹介等々。営業品目が次々流れ出るのはよしとして、次に、結婚披露宴―お葬式と続いている。確かに、利用価値のある総合商社ではあるが、結婚披露宴の後には、せめて他の品目を挟んでほしかった。慶事の後に<お葬式>をくっつけることもあるまい。それとも「ゆりかごから墓場まで」の営業方針を徹底するための意図があってのことか。

せつない貼り紙の例。
昨年11月の知事選挙のポスター。失業対策を全面に打ち出した候補は、惜しくも落選した。戦いすんで、撤去すべきポスターの一枚が電柱に残っていた。年明けとは言え、まだまだ冷たい風雨にさらされて、候補者の顔写真と<失業>の二文字が色褪せて電柱を抱いている。
「選挙にだけは出まい・・・・」
もともと、その気はないが、またぞろ、そう思わざるを得なかった。

 次号は2003年4月2日発刊です!

2003年3月分
週刊上原直彦(74)<看板・貼り紙・メニュー・電光広告>
週刊上原直彦(73)<弥勒さまと童たち>
週刊上原直彦(72)<歴史的文化的に・煙草>
週刊上原直彦(71)<球春到来>

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