毎週 木曜日発行!!  平成13年 11月1日創刊
週刊 上原 直彦 ニュース
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3月28日

連載 エッセイ
      「浮世真ん中」(22)

*看板・かぁぎ・看板小

ここまできたか日本経済。
沖縄市某所の焼肉屋の看板は、不景気の全貌を物語っている。曰く。
◇食べ放題=一、大人1000円。一、高校生1000円。一、子供1000円。
普通に「大人小人千円均一」でよさそうだが、経営者は、あまりの客足のなさに、普通のジンブン<思考>すら失念するほど追い込まれているのだろう。それとも、「あひゃんがれッ=どうにでもなれッ」の開き直りなのか。いや「ここまできたらバカを承知でシャレ飛ばせッ」なのか。願わくば、シャレであって欲しい。シャレの精神があれば<景気好転>まで、持ちこたえられる。さもないと、あまりに深刻すぎるではないか。この看板を一緒に見た歌者前川守賢は言った。
「ボクがおごりますから、食べに行きましょう」
彼は、政治なぞ頼みにせず、自らの手で日本経済を建て直す気でいる。

ところで。
同じ看板でも、沖縄芸能界には、別の意味を持つ<看板>もしくは<看板小=かんばん ぐぁ>なる言葉がある。
ずばりッ、女性の面相、容貌=沖縄口では、かぁぎ=のことである。表看板というくらいで、やはり、芸能人は美形であるにこしたこたはない。もっとも、いくら美形であっても、芸がお粗末では、話にならないが・・・・。
テレビ時代に入って沖縄民謡界でも<看板>を意識するようになった。風狂の歌者嘉手苅林昌<平成11年10月9日没>の看板論。
「蓄音機盤、レコード時代は終わった。これからはテレビ、ビデオ、映画<自分か出たから>の時代だ。多少、歌は下手でも看板小があれば通用する。それは、男性歌者にも当てはまるが、殊に女性歌者は、たとえ、上等看板ではなくても、愛嬌と壁塗り技術<化粧のこと>で、並以上の看板小に仕上げ、テレビ時代に対応するように」
この御高説を男性歌者陣は、笑って受け入れたが、看板にあまり自信のない女性歌者の中には「アンタには言われたくないッ」と、口には出さねど目に涙して、心の中で嘉手苅看板論に反駁した人も少なくなかった。

嘉手苅林昌  PHOTO by上野敦

島うたを収録し続け、CD化しているキャンパスレコードのオーナー備瀬善勝氏は、自らの好みで、沖縄民謡界金看板保持者<ベスト5>を選出している。それによると、女性の一位は山里ゆき子。二位古謝美佐子。三位伊波智恵子。四位金城洋子。五位我如古より子。
男性の順位もあるが、これは私自身がまったく興味がないので割愛する。もちろん、ワースト5も選出している。しかし、これについては、個人の名誉を尊重しなければ、人の道に反するので、私は公表を避ける。島うたの研究上、どうしても知りたい方は直接、備瀬善勝氏に<民俗学的協力>を要請すればよい。快く資料を提供するであろう。親切心でキャンパスレコードの電話番号を付記する。098−932−3801。
上原独白=美形ベスト5よりも、男女ともにワースト5の顔ぶれが分かりやすく面白い。

しかし「肝し容貌うやぎり=ちむ し かぁぎ うやぎり=」と言う諺がある。看板小は並でも下でも、人間的な清らかな心で容貌を捕えと、昔びとは説いている。また「容貌や皮、心第一=かぁぎ や かぁ、くくる でぇいち=」とも言う。
「美醜は顔の皮のなせること。人間、心の有り様こそが第一である」このことは、沖縄万民こぞって座右の銘にしているが、歌者の中には美醜にこだわり「だれそれはテレビ向き、それこれはラジオ向き」と、区分けを楽しむ輩がいる。かような差別意識は徹底して排除すべきである。
んッ?。どこからか声が聞こえる「アンタには言われたくないッ」
再び独白=世界的に男は<かぁぎ上戸>=かぁぎ じょうぐ=「美形好み」なんだよネ。

 

 次号は2002年4月4日発刊です!

3月分
週刊上原直彦(22)*看板・かぁぎ・看板小
週刊上原直彦(21)*うちなぁ口講座
週刊上原直彦(20)*美声悪声・絹声・荒芭蕉声
週刊上原直彦(19)*ちんだみ<調絃>


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あの、「週刊 文春」と同日の毎週木曜日です!!

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