毎週 木曜日発行!!    平成13年 11月1日創刊
週刊 上原 直彦  ニュース
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 一月総集編

1月31日

連載 エッセイ
      「浮世真ん中」(14)

*刀自夫婦問答

 「夫婦げんかは犬も喰わない」
その通り。結婚人生のキャリア38年の私も、まだ<悟り>が無く、夫婦げんかの花を咲かせている。
沖縄口では「刀自夫婦問答=とぅじ みぃとぅ むんどぉ」と言う。<みぃとぅ>は<めおと>の転語でいゝが、<刀自・とぅじ>とは如何に。またぞろ、「日本語大辞典」にお世話をかけてみた。
刀自=とじ。戸主の意。当て字。とうじ。(1)家事をつかさどる婦人。用例=家刀自。(2)老婦人の敬称。用例=母刀自。とある。日本の古語が沖縄語に残っている例のひとつと言えよう。
問答=一方が問い、他方が答えること。
と、同辞典にあるから、沖縄口の<刀自夫婦問答>は、日本語の<夫婦げんか>のように、罵り合い、傷つけ合い、時に殺し合い、一家離散と言ったような陰険かつ悲惨なものではない。犬も喰わない低次元では行われていない。なにしろ<問答>なのである。禅僧の域である。
問「人とは何ぞや」 答「人とは、ひとり。孤独なり。孤高なり」 問「では、人間とは何ぞや」 答「人間とは、孤独びとが集まり、その<間・あいだ>で生きることなり」なぞと成す高尚な行為が、刀自夫婦問答なり。
人はひとり。人間は一人ひとりの<間>で共存するものであるならば、飽きず夫婦げんかの花咲かせている私なぞ<人>の格好は、しているものの、まだ、<人間>にはなってない。これからは<夫婦げんか>ではなく、つとめて「刀自夫婦問答」をすることにしよう。
が、その火種が「メシが遅いッ」「靴が磨かれてないッ」「爪楊枝を切らすなッ」から始まるそれだから、問答で悟りを身につけるまでには時間を要する。真人間になるには、まだ<間>がありそうだ。

RBCラジオ月−金夜9時45分放送「はなしの万華鏡」のパーソナリティー小波津貞子夫婦の刀自夫婦問答は、いささか言語が的である。
彼女は神奈川県横浜の出。ハマッ子。夫君は沖縄県金武町生れ。現役の県会議員小波津浩利氏。学生時代に恋に落ち結婚。金武町に暮らしている。この識者夫婦でも、<けんか>はするそうな。もちろん、口げんかであることを明記しておく。
小波津貞子談。
「些細なことが原因なのヨ。でもネ。標準語でやり合っている内は、まだまだ穏やか。それがだんだんエスカレートし、敵が金武訛りの方言で言い返すようになると要注意ネ。人間、自分の生り島=んまりじま。出身地=の言葉でしゃべる時は、本気だもの。大和人=やまとぅんちゅ。本土人=の私には金武の純粋な方言は皆目、理解できない。そんな時はひとまず、退却することにしている。手が出るか足が飛ぶか知れたものではないモノ」
沖縄人でアメリカ人と結婚した女性にも、同様な話を聞いた。
そう言う私も、頭に血がのぼり過ぎると、沖縄口の中でも荒いと言われる垣花口<那覇市>で怒鳴っている。愚妻は一発で沈黙。部屋にこもって一日中出てこない。生命の危機を感知するのだろう「命どぅ宝」
まあ、それも人生の内。努めて標準語を使い、犬も喰わない「夫婦げんか」「刀自夫婦問答」を派手にやって生きていよう。 
↑小波津浩利さん・貞子さんご夫妻。
 

 次号は2002年2月7日発刊です!

1月分
週刊上原直彦(14)*刀自夫婦問答
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週刊上原直彦(11)*芝居塾「ばん」
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